電験三種の理論の問題でも、よく登場する磁性体とヒステリシスループ。ヒステリシス曲線やヒステリシス環線と呼んだりもします。
ヒステリシスループは形も横軸も縦軸も決まっているので、実際サービス問題です。
取りこぼしの無いようにしっかりと「磁性体とヒステリシスループの関係」を理解しておきましょう!
磁性体とは強磁性体のこと
まずは磁性体について知りましょう。
磁性体には大きく3種類あります。
- 強磁性体
- 常磁性体
- 逆磁性体(反磁性体)
これは磁束(磁石の電流みたいなもの)がどれくらい増加するかで決まります。ここでは強磁性体のみを取り扱います。
「強磁性体だけでいいの?」
と言われそうですが、強磁性体は単に磁性体とも呼ばれ、電磁気学で磁性体と言えば強磁性体だと思っていいです。
ヒステリシスループは磁性体の磁化を表している
ヒステリシスループの説明に入る前に磁化とは何かを説明します。
磁化
磁化とは・・・物体に磁界が加えられて、その物体が磁気的性質を帯びること
簡単に言うと、鉄の釘を磁石にひっつけると、ただの釘が磁石にみたいになったりしますよね。あれを磁化と言います。
そして磁化した釘は、ずーっと磁石みたいになって元には戻りませんよね。
もう少し専門的に言うと、磁性体の透磁率は外から加えられた磁界の強さによって変化します。つまり外から磁界\(H\)によって、磁束\(\phi\)(及び磁束密度\(B\))が変化します。
それを表したのがヒステリシスループです。
ではヒステリシスループの解説をしていきます。
ヒステリシスループ
ヒステリシスループは3ステップで理解できます。
ステップ1.磁性体に磁界を加える
磁性体(鉄の釘など)に磁界\(H\)を加えます。 下図のように磁性体に導線を巻いて、電流を流すことで磁性体に磁界を掛けます。

磁界\(H\) を大きくしていくと、徐々に磁性体内の磁束密度\(B\)が大きくなります。
横軸を磁界\(H\)、縦軸を磁束密度\(B\)としたグラフの原店\(O\)から出発して、点\(a\)に到達します。 赤色の①の道ですね。

その後、磁界 \(H\) を小さくして \(H=0\)にしても、\(B\)はゼロに戻らずに点\(b\)に到達します。
そして、\(H\)の方向を逆向き (負の方向) にかけると②の道を通って、点\(c\)~点\(d\)に到達します。
そこから更に磁界を\(H=0\)~正の方向にかけていくと、③の道を通って点\(a\)に戻ります。
つまり、最初の点\(O\)には二度と戻りません。
これが磁石化した釘が普通の鉄には戻らないイメージと合致しますね。
ヒステリシス損
ヒステリシスループの面積の大きさは、ヒステリシス損という損失を表しています。
鉄の分子相互間の摩擦によって生じる損失。
$$P_h=K_hfB_m^2=K’\frac{V^2}{f}$$
\(P_h: ヒステリシス損, \quad
K_h, K’: 比例定数\\
f: 電源周波数, \quad
B_m: 最大磁束密度\\
V: 電源電圧\)
この式からヒステリシス損(ヒステリシスループの面積の大きさ)は
- 周波数\(f\)に反比例
- 電源電圧\(V\)に比例
します。