過渡現象の問題として頻出する、直流回路での\(L\)と\(C\)。最近では過渡現象ではない問題でも登場することが多くなりました。オームの法則には抵抗\(R\)しか出てこないので、知識なしで解くのは正直絶望的です。
そこで、\(L\)と\(C\)の振る舞いについて解説します。
ただし、直流回路での振る舞いに限定して解説していますので、ご了承ください。
\(L\)(コイル)は直流回路では短絡(\(R=0\))
コイルは鉄芯に導線が巻かれたものです。このコイルは交流電源に繋がれると、電圧が掛かりますが、直流電源に接続されるとただの導線となります。

なので、流れる電流\(I\)もオームの法則に従います。
$$I=\frac{V}{R}$$
一見コイルを繋ぐ意味はないですよね。ではなぜ電験三種の問題では直流電源にコイルが繋がれるか。
理由は2つあります。
- 受験生の知識を試すため(短絡と知っているか)
- 過渡現象ではただの短絡ではないため
1は令和元年の問7にも登場した問題です。1はひとまず良いとして、問題は2ですね。Cの後にこの過渡現象についても触れたいと思います。
実際の電子回路などでは、ノイズをカットするため、直流成分だけを切り離すため、などの理由でも使われますが、電験三種では出題されていないので割愛しますね。
それでは\(C\)の解説に移ります。
\(C\)(コンデンサ)は直流回路では開放(\(R=\infty\))
\(C\)(コンデンサ)は回路図から見ても分かるとおり、2つの板が離れて設置された素子です。板の面積や板同士の距離で\(C\)の値が決まるのですが、そちらの解説は電磁気のページに譲ります。
ここで大切なのは、2つの板が離れて設置された素子であるという点です。
この板の間には誘電体(絶縁体)が挿入されており、直流の電気を通しません。つまり開放(\(R=\infty\))と同じになります。

ではなぜ電験三種の問題では直流電源にコンデンサが繋がれるか。こちらも理由は2つあります。
- 受験生の知識を試すため(開放と知っているか)
- 過渡現象ではただの開放ではないため
こちらも令和元年の問7で出題されています。しっかり覚えておきましょう。
\(L\)と\(C\)の過渡現象での振る舞い
最後に過渡現象について簡単に触れておきます。
詳しくは過渡現象のページをご覧ください。
過渡現象はスイッチが開いている状態から、\(t=0\)でスイッチを閉じたときの電流や電圧を求める問題です。(もちろん閉じてる状態から開く問題もあります。)
その時の\(L\)と\(C\)の振る舞いを知っておきましょう。
\(L\)の振る舞い
\(L\)はスイッチを閉じた瞬間は開放と同じ状態になります。入ってくる電圧を拒否しているんですね。電磁誘導という現象です。
コイルに磁石を近づけると、磁石を弾き出すような磁界が発生する電流が流れます。(詳しくは電磁気学になります。)
これとは逆に電流がコイルに流れると、その電流を打ち消すような磁界を発生させて、電流を食い止めようとします。それによってスイッチを閉じた瞬間は開放状態になるんですね。
ですが時間が十分に経過すると、電磁誘導が落ち着いてきて短絡状態になります。
まとめると、
- スイッチを閉じた瞬間:開放
- スイッチを閉じて十分に時間が経過:短絡
です!
\(C\)の振る舞い
\(C\)はスイッチを閉じた瞬間は短絡と同じ状態になります。入ってくる電流を一身に受け止めて電荷を貯めています。
そして電荷が一杯になると、電源電圧と同じ大きさで逆向きの電圧を持ちます。結果として、十分に時間が経つと開放となります。
- スイッチを閉じた瞬間:短絡
- スイッチを閉じて十分に時間が経過:開放
注意点を2つ
ここで注意点を2つ紹介します。
- 過渡現象について今分からなくても大丈夫
- 過渡現象と定常状態の区別はしておく
1つ目は、解説についての注意です。
例えば、過渡現象の問題を解いたことがなく(もしくは勉強したことがなく)この解説を読んでも半分も理解できない可能性があります。ですが、絶対わかるようになるので、ここで電験三種を諦めるようなことはしないでくださいね!
2つ目は、過渡現象と定常状態の区別をしておくことです。
スイッチを閉じた瞬間は短絡だ開放だと解説しましたが、あくまでも過渡現象での話です。なので、スイッチのない回路に\(L\)や\(C\)がある場合は、定常状態(過渡現象で言う、十分に時間が経過した状態)ですので、間違えないようにしましょう。