問3(答え:2)
図は積層した電磁鋼板の鉄心の磁化特性(ヒステリシスループ)を示す。図中の\(B[T]\)及び\(H[A/m]\)はそれぞれ磁束密度及び磁界の強さを表す。この鉄心にコイルを巻きリアクトルを製作し、商用交流電源に接続した。実効値が\(V[V]\)の電源電圧を印加すると図中に矢印で示す奇跡が確認された。コイル電流が最大の時の点は(ア)である。次に電源電圧実効値が一定に保たれたまま、周波数がやや低下したとき、ヒステリシスループの面積は(イ)。一方、周波数が一定で、電源電圧実効値が低下したとき、ヒステリシスループの面積は(ウ)。最後にコイル電流実効値一定で周波数がやや低下したとき、ヒステリシスループの面積は(エ)。

この問題は結構サービス問題です。必要な知識は
- ヒステリシスループ
- ヒステリシス損
です。ただし、ヒステリシスループが分からない場合は全く歯が立ちません。分からない方は一度ヒステリシスループを理解することをおススメします。
では解説します!
コイル電流が最大の時の点は(ア)である。
答えの候補は1か2か3です。
まずは電流が最大と言うことは、\(B\)が大きくなるのか、\(H\)が大きくなるのか理解しましょう。\(H\)の単位は\([A/m]\)なので、電流が大きくなると\(H\)も大きくなります。
つまり電流が最大になると、横軸で1番右にある点が答えとなりますね。
なので答えは1です。
(イ)(ウ)(エ)の答え
(イ)(ウ)(エ)の3つはヒステリシスループの面積、つまり、ヒステリシス損についての問題です。
ヒステリシスループの面積はヒステリシス損に比例しています!
ヒステリシス損の式は覚えていますか?
まあ完璧に覚えていなくてもいいですが、周波数が低下したら?電圧が上昇したら?損失がどうなるかは覚えておきましょう。
鉄の分子相互間の摩擦によって生じる損失。
$$P_h=K_hfB_m^2=K’\frac{V^2}{f}$$
ヒステリシスループの面積(ヒステリシス損)は、
- 周波数\(f\)に反比例
- 電源電圧\(V\)に比例 します。
ここまで来たらもう簡単。
周波数がやや低下したとき、ヒステリシスループの面積は(イ)
問題文には電源電圧実効値が一定で、周波数がやや低下とあります。面積は電源電圧\(V\)に比例 で周波数\(f\)に反比例なので、
周波数が低下したとき、面積は大きくなります。
電源電圧実効値が低下したとき、ヒステリシスループの面積は(ウ)
問題文には周波数が一定で、電源電圧実効値がやや低下とあります。 電源電圧\(V\)に比例で周波数\(f\)に反比例なので、
電源電圧実効値が低下したとき、面積は小さくなります。
コイル電流実効値一定で周波数がやや低下したとき、ヒステリシスループの面積は(エ)
これは少し難しいですね。
コイル電流値が一定なのに、周波数がやや低下すると、電源電圧実効値もやや低下することになります。周波数が低下するってことはコイルのリアクタンスが低下しています。
リアクタンスが低下したのに電流が一定と言うことは、電圧が低下していないとおかしいからです。
$$X_L=2\pi fL\\
I=\frac{V}{X_L}$$
つまり、問題文は「周波数がやや低下して、電圧もやや低下した」と言い換えることができます。
電源電圧\(V\)に比例 で周波数\(f\)に反比例なので、 答えはあまり変わらないです。