加法定理
\begin{eqnarray}
\sin (A \pm B) &=& \sin A \cos B \pm \cos A \sin B\\ \\
\cos (A \pm B) &=& \cos A \cos B \mp \sin A \sin B\\ \\
\tan (A \pm B) &=& \displaystyle \frac{\tan A \pm \tan B}{1 \mp \tan A \tan B}
\end{eqnarray}
加法定理は三角関数のなかでも、【最重要】と言ってもいい定理です。
なぜなら使い所がとっても多いから!
などなど。とにかく絶対に覚えておくべき定理です。
今回は加法定理とは何か、その証明と覚え方、応用の紹介をします。
加法定理とは|6つの式である
そもそも加法定理とは何でしょうか。
加法定理とは、以下の6つの式の総称です。
加法定理
\begin{eqnarray}
\sin (A \pm B) &=& \sin A \cos B \pm \cos A \sin B\\ \\
\cos (A \pm B) &=& \cos A \cos B \mp \sin A \sin B\\ \\
\tan (A \pm B) &=& \displaystyle \frac{\tan A \pm \tan B}{1 \mp \tan A \tan B}
\end{eqnarray}
少しごちゃごちゃしていますが、しっかり証明する公式は1つだけ!
$$\cos(α-β)=\cosα\cosβ+\sinα\sinβ$$
残り5つは、この式を変形して証明できるのです!
では証明していきます。
加法定理の証明
加法定理は3ステップで証明していきます。
上記のような半径\(1\)の円を書いて、円上に点Pと点Qを取ります。
ここでPとQの座標はそれぞれ$$P (\cos A,\ \sin A),\ Q(\cos B, \sin B)$$です。
この時の\(△OPQ\)の辺\(PQ\)を2通りの方法で求めて、イコールで結ぶと加法定理を証明できます。
では実際に証明していきましょう!
座標を用いた加法定理の証明
加法定理証明|ステップ1三平方の定理
点\(P,\ Q\)の座標はそれぞれ、
$$P (\cos A,\ \sin A),\ Q(\cos B, \sin B)$$
このとき、辺PQの大きさは三平方の定理より、
$$PQ^2=(\cos α- \cos β)^2+(\sin α- \sin β)^2$$
となる。
加法定理証明|ステップ2 余弦定理
ここで余弦定理を使います!
△OPQに余弦定理を適用すると、
$$PQ^2=p^2+q^2-2pq\cosθ$$
ここで\(θ=β-α\)であるから、
$$\cos θ=\cos (β-α)$$
次に\(p\)と\(q\)の値はそれぞれ円の半径と等しいので、
$$p=q=1$$
以上より、
\begin{eqnarray} PQ^2
&=&p^2+q^2-2pq\cosθ \\
&=& 1 +1-2\cos (β-α)\\
&=&2\{1-\cos (β-α)\}
\end{eqnarray}
加法定理証明 ステップ3 イコールで結ぶ
三平方の定理より求めた\(PQ\):
$$PQ^2=(\cos α- \cos β)^2+(\sin α- \sin β)^2\cdots(1)$$
余弦定理より求めた\(PQ\):
$$PQ^2=2\{1-\cos (β-α)\}\cdots(2)$$
\((1)=(2)\)とすると、
$$(\cos α- \cos β)^2+(\sin α- \sin β)^2=2\{1-\cos (β-α)\}$$
となる。
\begin{eqnarray}
左辺&=&\cos^2 α-2\cos α \cos β+\cos^2 β+\sin^2 α -2\sin α \sin β+\sin^2 β\\\\
& &\sin^2 α+\cos^2 α=1より、\\\\
&=&2-2\cos α \cos β-2\sin α \sin β
\end{eqnarray}
まとめると、
\begin{eqnarray}
2(1-\cos α \cos β-\sin α \sin β)&=&2\{1-\cos (β-α)\}\\
-\cos (β-α)&=&-\cos α \cos β-\sin α \sin β\\\\
\cos (-x)&=&\cos xなので\\\\
\cos (α-β)&=&\cos α \cos β+\sin α \sin β
\end{eqnarray}
証明完了です!
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加法定理|残り5式の証明
では、求めた式を使って6式とも証明しちゃいます!
と、その前に三角関数の基礎的な式は覚えていますか?
一度復習しておきましょう。
\begin{eqnarray}
\sin (-x)&=& -\sin x \\
\cos (-x)&=& \cos x \\
\sin (x-\displaystyle \frac{\pi}{2})&=& \cos x \\
\cos (x-\displaystyle \frac{\pi}{2})&=& -\sin x \
&=& 1 \end{eqnarray}
これら4つの式を使えば、証明できますよ!
加法定理の証明|\(\cos(α+β)\)
1つ目はこの式から
$$\cos(α+β)=\cosα\cosβ-\sinα\sinβ$$
さっき証明した式を見てみましょう。
$$\cos(α-β)=\cos α\cos β+\sin α\sin β$$
この式\(β\)に\(-C\)を代入してみます。
\begin{eqnarray}
\cos (α-β)&=&\cos α \cos β+\sin α \sin β\\
\cos (α-(-C))&=&\cos α\cos (-C)+\sin α\sin (-C)\\
\cos (α+C)&=&\cos α\cos C+\sin α\sin C\
&=& 1 \end{eqnarray}
以上より、
$$\cos (α+β)=\cos α\cos β-\sin α\sin β$$
は、成立する
証明完了ですね。
加法定理証明|\(\sin(α+β)\)
次は、
$$\sin (α+β)=\sin α\cos β+\cos α\sin β$$
の証明です。
\(\cos(α+β)=\cosα\cosβ-\sinα\sinβ\)の\(β\)に\((γ-\displaystyle \frac{\pi}{2})\)を代入する。
\begin{eqnarray}
\cos (α+(γ-\displaystyle \frac{\pi}{2}))&=&\cos α\cos (γ-\displaystyle \frac{\pi}{2})-\sin α\sin (γ-\displaystyle \frac{\pi}{2}) \\
-\sin (α+γ) &=& -\cos α \sin γ-\sin α \cos γ\\
\sin (α+γ) &=& \sin α \cos γ+\cos α \sin γ
\end{eqnarray}
証明完了です!
加法定理証明|\(\sin(α-β)\)
続いて、
$$\sin (α-β)=\sin α\cos β – \cos α\sin β$$
の証明です。
\(\cos(α-β)=\cosα\cosβ+\sinα\sinβ\)の\(β\)に\((γ-\displaystyle \frac{\pi}{2})\)を代入する。
\begin{eqnarray}
\cos (α-(γ-\displaystyle \frac{\pi}{2}))&=&\cos α\cos (γ-\displaystyle \frac{\pi}{2})+\sin α\sin (γ-\displaystyle \frac{\pi}{2}) \\
\sin (α-γ+\displaystyle \frac{\pi}{2}) &=& -\cos α \sin γ+\sin α \cos γ\\
\sin (α-γ) &=& \sin α \cos γ-\cos α \sin γ
\end{eqnarray}
証明完了です!
加法定理証明|\(\tan (α+β)\)
続いて、
$$\tan (A + B) = \displaystyle \frac{\tan A + \tan B}{1 – \tan A \tan B}$$
の証明です。
\(\tan x=\displaystyle \frac{\sin x}{\cos x}\)より、
\begin{eqnarray}
\tan(α+β) &=& \displaystyle \frac{\sin (α+β)}{\cos (α+β)} \\ \\
&=& \displaystyle \frac{\sin α \cos β+ \cos α \sin β}{\cos α \cos β-\sin α \sin β}\\\\
&=&\displaystyle \frac{\displaystyle \frac{\sin α}{\cos α}+\displaystyle \frac{\sin β}{\cos β}}{1-\displaystyle \frac{\sin α \sin β}{\cos α \cos β}}\\\\
&=&\displaystyle \frac{\tan α + \tan β}{1 – \tan α \tan β}
\end{eqnarray}
証明完了です。
\(\tan (α-β)\)も同様の計算で証明できるので、割愛させていただきます!
加法定理の暗記の方法
まず左辺ですが、サインコサインタンジェントの順番で並んでいますね。中の符号は+、-、+、-・・・なので覚えるのは簡単です。
加法定理
\begin{eqnarray}
\sin (A \pm B) &=& \sin A \cos B \pm \cos A \sin B\\ \\
\cos (A \pm B) &=& \cos A \cos B \mp \sin A \sin B\\ \\
\tan (A \pm B) &=& \displaystyle \frac{\tan A \pm \tan B}{1 \mp \tan A \tan B}
\end{eqnarray}
語呂合わせは上から
『サイン コスコス サイン』
『コスコス サインさいん』
\(\tan \)は語呂合わせなし!です。
オススメの覚え方ですが、『語呂合わせ』+『\(\sin\)は符号そのまま!』と覚えておきましょう。
すると、\(\cos\)は符号が反転だったな!と覚えられます。
\(\tan\)を覚えるのは、脳の容量の無駄遣いです!
\(\tan x=\displaystyle \frac{\sin x}{\cos x}\)だけを覚えて、その場で導くのがいいでしょう!
【重要】三角関数の公式一覧
三角関数は公式を知っているかどうかで、勝負が決まります。
加法定理以外の重要公式もまとめたので、確認しましょう。
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