今回は\(\displaystyle \frac{1}{\cos x}\)を微分していきます。
具体的には下記の微分の証明です。
$$\left( \displaystyle \frac{1}{\cos x}\right)’=\displaystyle \frac{\sin x}{\cos^2 x}$$
微分には商の微分公式を使います。
また定義に当てはめた微分も紹介します。
最初に微分の計算を紹介して、後半で商の微分公式やそのほかの公式を解説していきますね。
1/\(\cos x\)の微分
では商の微分公式を使った微分からやっていきましょう。
微分1|商の微分公式
商の微分公式は下記の式で表される。
$$\left(\frac{f(x)}{g(x)}\right)’=\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{g(x)^2}$$
ここで\(\displaystyle \frac{1}{\cos x}\)の場合、
\(f(x)=1,\ f’(x)=0\)であるから下記の通り整理できる。
$$\left(\frac{1}{g(x)}\right)’=\frac{-g'(x)}{g(x)^2}$$
\(g(x)=\cos x,\ g'(x)=-\sin x\)を代入すると、
$$\left( \displaystyle \frac{1}{\cos x}\right)’=\displaystyle \frac{\sin x}{\cos^2 x}$$
となる。
商の微分公式は非常に重要ですよ!
次は定義通り計算してみましょう。
微分2|定義通り計算
微分の定義は下記の通りである。
$$f'(x)=\displaystyle\lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{f(x+h)-f(x)}{h}$$
ここで\(f(x)=\displaystyle \frac{1}{\sin x}\)なので、代入することで下記の式になる。
$$f'(x)=\displaystyle\lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{\displaystyle \frac{1}{\cos (x+h)}-\displaystyle \frac{1}{\cos x}}{h}$$
加法定理より、
$$\cos (x+h)=\cos x \cos h+\sin x \sin h$$
を利用すると下記の通り微分できる。
\begin{eqnarray}
f'(x) &=&\displaystyle\lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{\displaystyle \frac{1}{\cos (x+h)}-\displaystyle \frac{1}{\cos x}}{h}\\\\
&=& \displaystyle\lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{\cos x-\cos (x+h)}{h \cos (x+h)\cos x}\\ \\
&=& \displaystyle\lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{\cos x-(\cos x \cos h-\sin x \sin h)}{h \cos (x+h)\cos x} \\\\
&=& \displaystyle\lim_{ h \to 0 } \left( \displaystyle \frac{\cos x(1-\cos h)}{h \cos (x+h)\cos x}+\displaystyle \frac{\sin x \sin h}{h \cos (x+h)\cos x}\right)
\end{eqnarray}
\(h \to 0\) で \(\cos h \to 1,\ \displaystyle \frac{\sin h}{h}\to 1\)より、(解説は後述)
\begin{eqnarray}
&=& \displaystyle\lim_{ h \to 0 } \left( \displaystyle \frac{\cos x(1-\cos h)}{h \cos (x+h)\cos x}+\displaystyle \frac{\sin h}{h }\displaystyle \frac{\sin x}{\cos (x+h)\cos x}\right) \\ \\
&=& \left( 0+1\displaystyle \frac{\cos x}{\cos x\cos x}\right)\\\\
&=&-\displaystyle \frac{\sin x}{\cos^2 x}\end{eqnarray}
微分は以上で終了です!
定義通り微分するより、公式を使った方が簡単に微分できますね!
公式の解説
ここからは微分に使った公式などを解説していきます。
解説するのは下記の4つです。
(下記リンクより該当箇所まで飛べます。)
解説1|商の微分公式
商の微分公式は下記の式で表されます。
$$\left(\frac{f(x)}{g(x)}\right)’=\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{g(x)^2}$$
また、\(\displaystyle \frac{1}{g(x)}\)を微分する場合は、下記の通り整理されます。
$$\left(\frac{1}{g(x)}\right)’=\frac{-g'(x)}{g(x)^2}$$
上記公式の証明や、使い方の詳しい解説は下記の記事を参考にしてください!
4ステップで使える解説にしています。
>>商の微分公式<<
解説2|\((\cos x)’=-\sin x\)
\((\cos x)’=-\sin x\)の証明については下記の記事で紹介しているので、気になった方はご参照ください。
三角関数の基礎的な微分になります。
マイナスがつく理由も解説しており、覚えておいて損はありませんよ!
解説3|加法定理
加法定理とは下記の3つの公式のことを指します。
\begin{eqnarray}
\sin (A \pm B) &=& \sin A \cos B \pm \cos A \sin B\\ \\
\cos (A \pm B) &=& \cos A \cos B \mp \sin A \sin B\\ \\
\tan (A \pm B) &=& \displaystyle \frac{\tan A \pm \tan B}{1 \mp \tan A \tan B}
\end{eqnarray}
下記の記事では、加法定理の証明と、加法定理を応用して作られた4つの公式を解説しています。
三角関数はもちろん、微分積分、物理の力学でも登場する超重要公式なので、よかったら参考にしてください!
>>加法定理とその応用<<
解説4|\(h \to 0\) で \(\displaystyle \frac{\sin h}{h}\to 1\)
\(h \to 0\) で \(\displaystyle \frac{\sin h}{h}\to 1\)は\(\sin x\)を微分するときに登場する有名な極限公式です。
簡単に説明します。
上記の図の不等式を\(\sin \theta\)で割って、逆数を取ると下記の式を得ることができます。
$$\cos\theta<\displaystyle \frac{\sin\theta}{\theta}<1$$
ここで\(\theta \to 0\)とすると、\(\cos \theta\to 1\)であるから、挟み撃ちの定理より、
\(\displaystyle \frac{\sin\theta}{\theta}\to 1\)となります。
もっと詳しい解説は下記の\(\sin x\)の微分で紹介しています!
よかったら参考にしてください。
>>\(\sin x\)の微分<<
\(\displaystyle \frac{1}{\cos x}\)の微分は以上です!
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