余弦定理は三角比の中でも重要な定理です。
三角形\(ABC\)において、\(AB=c,\ BC=a,\ CA=b\)とするとき下記の式が成り立つ。

$$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A\\
b^2=c^2+a^2-2ca \cos B\\
c^2=a^2+b^2-2ab \cos C$$
この余弦定理ですが、証明の方法は大きく2つあります。
- 三角関数を使って証明する
- ベクトルを使って証明する
三角関数を使って証明する方法が一般的ですが、場合分けをする必要があり少し大変です。
三角形の角度が鋭角・直角・鈍角の3パターンに分けて証明するためです。
今回は場合分けが必要ない、ベクトルを使った方法で余弦定理を証明していきたいと思います!
ベクトルを使った証明の場合、循環論法になってしまう可能性があるので、最後にその話をしたいと思います。
余弦定理の証明|ベクトルの内積を復習する
余弦定理には2つのベクトルの知識が必要です!
- ベクトル内積の定義
- ベクトル内積の分配法則
この2つを先に確認しておきましょう!(知ってる方は飛ばしてOK!!)
ベクトル内積の定義
まずはベクトル内積の定義です。
\(\vec{A}\)と\(\vec{B}\)の2つのベクトルがあったとき、内積は下記の式で表すことができる。
$$\vec{ A }\cdot\vec{B}=|A||B|cos\theta$$
これが内積の定義です。

このベクトル内積の定義を使って証明していきましょう!
ベクトル内積の分配法則
次は内積の分配法則です。
ベクトル内積の分配法則
$$\vec{a}\cdot(\vec{b}+\vec{c})=\vec{a}\cdot\vec{b}+\vec{a}\cdot\vec{c}$$
分配法則の証明はいくつかパターンがあるのですが、余弦定理を使う証明の方法もあります。
分配法則に余弦定理を使った証明(成分表示による証明)をしてしまうと、冒頭で話した循環論法になってしまうのです。
詳しくは証明の後に解説しますね!
余弦定理の証明|証明する
いよいよ余弦定理の証明です。
三角形\(ABC\)において、\(AB=c,\ BC=a,\ CA=b\)とするとき下記の式が成り立つ。

$$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A\\
b^2=c^2+a^2-2ca \cos B\\
c^2=a^2+b^2-2ab \cos C$$
今回は代表で、
$$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$$を証明していきます。
余弦定理の証明
\begin{eqnarray} a^2 &=& |\vec{BC}|^2 \\
&=& |\vec{AC}-\vec{AB}|^2 \end{eqnarray}
ここで内積の定義を用いると、下記のように書ける。
\begin{eqnarray} |\vec{AC}-\vec{AB}|^2 &=&|\vec{AC}-\vec{AB}||\vec{AC}-\vec{AB}|\\
&=&\displaystyle \frac{(\vec{AC}-\vec{AB})\cdot(\vec{AC}-\vec{AB})}{\cos\theta} \\ \end{eqnarray}
ここで\(\theta\)は内積を取る2本のベクトルがなす角なので、\(\theta=0°\)
よって、
$$|\vec{AC}-\vec{AB}|^2=(\vec{AC}-\vec{AB})\cdot(\vec{AC}-\vec{AB})$$
となる。
ここで、内積の分配法則を用いると、
\begin{eqnarray} |\vec{AC}-\vec{AB}|^2&=&(\vec{AC}-\vec{AB})\cdot(\vec{AC}-\vec{AB})\\
&=& \vec{AC}\cdot \vec{AC}-2\vec{AC}\cdot\vec{AB}+\vec{AB}\cdot\vec{AB}\\
\end{eqnarray}
となります。
最後にもう一度内積の定義を使って、各項を計算します。
\begin{eqnarray}\vec{AC}\cdot \vec{AC}&=&|AC|^2=b^2 \\
-2\vec{AC}\cdot\vec{AB} &=& -2|b||c|\cos A
\\ \vec{AB}\cdot\vec{AB}&=& |AB|^2=c^2 \end{eqnarray}
以上をまとめると、
$$|\vec{AC}-\vec{AB}|^2=b^2+c^2-2|b||c|\cos A$$
\(|\vec{AC}-\vec{AB}|^2=a^2\)なので、
$$a^2=b^2+c^2-2|b||c|\cos A$$
となる。

内積の定義を使って行ったり来たりする証明だけど、そんなに難しいところは無いんじゃないかなと思います!疑問があったら、いつでもTwitterもしくはお問合せからご連絡ください!
余弦定理の証明|循環論法にならないために
先ほど証明した通り、余弦定理をベクトルで証明すると、内積の分配法則を使用します。
この分配法則を内積の成分表示で表すと、循環論法となってしまいます。
内積の成分表示に余弦定理を使用しているからです。

具体的にはこうです。
- 余弦定理を証明したい!
- ベクトルの分配法則を使おう
- 内積の成分表示が必要だな
- 成分表示に余弦定理を使うのかー
- あれ??
と言った感じです。
詳しくは循環論法とベクトル内積の分配法則のページに説明を譲りたいと思います。
循環論法になっていると、減点の対象になることもあります。
しかし、上記でやった証明をしていれば問題ないので、あまり気にする必要はありません!

そんなのもあるんだなー
くらいの知識があれば大丈夫ですよ!
私も知ったのは高校卒業の後です。笑
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余弦定理のベクトル証明|まとめ
余弦定理を証明する方法は2つあります。
- 三角関数を使って証明する
- ベクトルを使って証明する
今回は2の『ベクトルを使って証明する方法』を解説しました。
証明に必要な知識は2つありました。
- ベクトル内積の定義
- ベクトル内積の分配法則
このうち、分配法則の証明に余弦定理を使うと循環論法になるので注意が必要です。
とは言っても、この記事で解説した方法を使えば問題はないので、あまり気にする必要はありません!
知識だけ入れておきましょう!!
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