今回はベクトルを習うと必ず通る『内積』について解説していきます。
内積はイメージが難しく、ベクトルが苦手になる要因の1つです。
しかし、意外と簡単に理解できるのもベクトルです。
そこで、ベクトルの内積とは何か、どう使えるのか、具体的な問題は?などの疑問に答えていきます!
ベクトルの内積とは
ベクトルの内積とは、下記の式で表されるベクトル特有の計算です。
$$\vec{ A }\cdot\vec{B}=|A||B|cos\theta$$
良く例えられるのが、「ベクトルの内積はベクトルの影」です。
図と式で見てみましょう。

ベクトルの内積の定義
ベクトルの内積の定義は下記の式で表せます。
$$\vec{ A }\cdot\vec{B}=|A||B|cos\theta$$
また、図から
$$\vec{A}=(a_{1},\ a_{2}),\ \vec{B}=(b_{1},\ b_{2})$$
とすると内積は余弦定理を用いることで、
$$\vec{ A }\cdot\vec{B}=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}$$
と表すことができます。
ここは重要なのですが、
これらの式から分かるように、内積はスカラー量です!
ここはすごく重要で、ベクトルの内積を計算すると出てくるのはスカラー量であり、ベクトル量ではありません。
方向を持っていないということです。

では内積に戻ります。
じゃあこれが一体何なの?
という疑問にお答えします。
内積とは『仕事量』もしくは『貢献度』
内積とは『仕事量』や『貢献度』を表しています。
先ほどの図に戻りましょう。

例えば今、\(\vec{A}\)と\(\vec{B}\)の交点に船が一隻あったとします。(∠\(\theta\)の頂点)
この時、本当は(\vec{A})の方向に進まなければいけないのに、風の影響で(\vec{B})の方向に動いてしまいました。
言い換えると\((a_{1},\ a_{2})\)に行きたいのに、\((b_{1},\ b_{2})\)に来てしまったイメージです。
この時、\((a_{1},\ a_{2})\)の方向にはどれくらい進みましたか?
という問いに答えるのが内積です。
内積の計算方法
では具体的な内積の計算方法を確認していきましょう。
式はどちらを用いても構いません。
$$\vec{ A }\cdot\vec{B}=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}\tag{1}$$
$$\vec{ A }\cdot\vec{B}=|A||B|cos\theta\tag{2}$$

(1)式で解いてみましょう。
$$\vec{ A }\cdot\vec{B}=4×1+2×3=10$$
となります。(2)でも解いてみましょうー!
$$|A|=\sqrt{20}=2\sqrt{5},\ |B|=\sqrt{10}$$
です。絶対値は三平方の定理より求めることが可能です。
$$cos45^{ \circ }=\frac{1}{\sqrt{2}}$$
なので、(2)式に代入すると・・・
$$\begin{align}
\vec{A}\cdot\vec{B} &= |A||B|cos\theta \\
&= 2\sqrt{5}×\sqrt{10}×\frac{1}{\sqrt{2}} \\
&= 10
\end{align}$$
と言うわけで、内積を求めることはできるようになったでしょう!
ベクトルの内積を求めるコツ
ここで、求めるコツを紹介しますね。
式が2種類ありますので、どちらを使うべきか考えます。\(\theta\)がわかっている場合はほとんど式(2)です。
逆に\(\theta\)がわかっていない場合は(1)式となります。
それでは、ベクトルの内積をどうやって活用するかを考えていきましょう!
ベクトルの内積の活用方法
先ほどの図をもう一度使って考えます。

ただし、\(\theta=?\)になっていますね。2つのベクトルがなす角が分からないけれど、内積は分かる。って状況です。
$$\vec{A}\cdot\vec{B}=10$$
はさっき求めましたよね。すると以下の式が成り立ちます。
$$\vec{A}\cdot\vec{B}=|A||B|cos\theta=10$$
$$|A||B|=10\sqrt{2}$$
ですので、\(cos\theta=\frac{1}{\sqrt{2}}\)となります。
$$\text{∴}\theta=45^{ \circ }$$
となるわけです!ベクトルから角度が分かるようになるのです。
内積の公式と計算法則
最後にベクトルの内積の計算法則を紹介します。これを知っているかどうかで応用の幅が大きく変わります!
内積は交換できる
ベクトルの内積は交換が可能です。
$$\vec{A}\cdot\vec{B}=\vec{A}\cdot\vec{B}$$
まあイメージ通りですかね。
内積は倍にできる
ベクトルの内積は定数kをかけることもできますよ!
$$k\vec{A}\cdot\vec{B}=\vec{A}\cdot k\vec{B}$$
もちろん\(k(\vec{A}\cdot\vec{B})\)なんて事もできます。
内積は分配もできる
分配もできます。
$$\vec{A}\cdot (\vec{B}+\vec{C})=\vec{A}\cdot\vec{B}+\vec{A}\cdot\vec{C}$$
って感じですね。
ベクトル内積のまとめ
以上をまとめましょう!
- 内積とは仕事量・貢献度を表すスカラー量である
- 計算方法は2つある
- 2つのベクトルがなす角を求めることが可能

内積は意味と計算方法、そして計算結果がスカラー量である、という3つのポイントを抑えれば理解が早まります!
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