今回は三角関数の中でも重要な、加法定理とその応用です。
この加法定理は絶対に知っておくべきポイントが3つあります!
この記事では4ポイント全て解説しています。
加法定理とその応用に関する基礎知識が全て手に入る構成にしました。
この記事を読めば、「あとは問題集を解いて練習するだけ!」
そんな状態になれます。
関連記事を含めたら35,000文字以上の超大作です!
理解する価値のある記事だと思います!
では、加法定理とは何かの説明と、加法定理の証明から解説していきましょう。
加法定理
加法定理とは、下記に示す3つの式から成る定理で、三角関数の角度の足し算を分解してくれる便利な定理です。(符号違いを含めると6つの式から成ります)
\begin{eqnarray}
\sin (A \pm B) &=& \sin A \cos B \pm \cos A \sin B\\ \\
\cos (A \pm B) &=& \cos A \cos B \mp \sin A \sin B\\ \\
\tan (A \pm B) &=& \displaystyle \frac{\tan A \pm \tan B}{1 \mp \tan A \tan B}
\end{eqnarray}
では、加法定理の証明をしていきます。
加法定理の証明
加法定理を証明する方法は3つあります。
1つ目は、三角形の面積の公式を使った証明。
2つ目は、単位円を使って2点間の距離の公式と余弦定理を利用する証明。
3つ目は、オイラーの公式を使った証明です。
加法定理を証明する方法
- 三角形の面積を使う方法
- 2点間の距離の公式と余弦定理を使う方法
- オイラーの公式を使う方法
どの証明方法を使うにしてもそうですが、最初に6つある加法定理のうち1つの式を証明します。
そして証明した1つの式を使って、残りの5つの式を証明する流れになります。
ここでは、三角形の面積を使う方法で1つの式の証明まで解説します。

残りの式の証明方法はこちらの記事を参考にしてください!2点間の距離の公式と余弦定理を使う方法も解説していますよ!

三角形の面積の公式を使って証明
三角形の面積を2通りの方法で計算することで、加法定理を証明します。
加法定理の証明

ある三角形ABCの面積を計算します。
三角形を2つに分けて、\(△ABD\)と\(△ACD\)の面積を出して足す方法で求めます!
高さ\(AD\)が\(AD=c \cos α=b \cos β\)であることを利用する。
面積\(S\)=底辺×高さ÷2なので、
\begin{eqnarray}
S&=& \displaystyle \frac{1}{2}\cdot c \sin α\cdot b\cos β+\displaystyle \frac{1}{2}\cdot b \sin β\cdot c\cos α \\\\
&=& \displaystyle \frac{1}{2}bc\ (\sin α \cos β+\cos α \sin β)
\end{eqnarray}
次に、三角形の図に補助線を引いて、面積を求めます。

右図のように、\(B\)から線\(b\)に垂線を引いて、高さとします。\(b\)が底辺です。
すると、面積\(S\)は以下のように計算できます。
$$S=\displaystyle \frac{1}{2}b\cdot c \sin (α+β)$$
先ほど求めた面積とこの面積は等しいので、イコールで結びます。
\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{1}{2}b\cdot c \sin (α+β)&=&\displaystyle \frac{1}{2}bc\ (\sin α \cos β+\cos α \sin β)\\\\
∴\ \sin (α+β)&=&\sin α \cos β+\cos α \sin β
\end{eqnarray}
あとはこの式を変形していくことで、加法定理6つの式を全て証明できます。
残りの証明はこちらの記事を参照ください。
加法定理を応用した4つの公式
加法定理を応用した代表的な公式は4つあります。
加法定理を応用した代表的な公式
- 倍角(二倍角)の公式
- 半角の公式
- 和積の公式
- 積和の公式
+αで3倍角の公式も有名!
1つずつ解説していきます。
2倍角の公式
2倍角の公式とは
\begin{eqnarray}
(a)\ \sin 2\theta &=& 2\sin \theta \cos \theta \\ \\
(b)\ \cos 2\theta &=&\cos^2 \theta-\sin^2 \theta\\
&=& 2\cos^2 \theta-1\\
&=&1-2\sin^2 \theta\\\\
(c)\ \tan 2\theta&=&\displaystyle \frac{2\tan \theta}{1-\tan^2 \theta}
\end{eqnarray}
2倍角の公式とは\((a),\ (b),\ (c)\)の3つの式から成る公式である。
このように\(2\theta\)を含む三角関数を\(\theta\)だけに直すのが2倍角の公式です。
\(2\sin \displaystyle \frac{\pi}{12}\cos\displaystyle \frac{\pi}{12}=\sin \displaystyle \frac{\pi}{6}=\displaystyle \frac{1}{2}\)
みたいな使い方ができます。
他の公式の証明や微分積分にも使える、とっても便利な公式です。
↓ 2倍角の公式の証明と解説はこちら↓

半角の公式
半角の公式とは
\begin{eqnarray}
\sin^2 \displaystyle \frac{\theta}{2} &=& \displaystyle \frac{1-\cos \theta}{2}\\\\
\cos^2 \displaystyle \frac{\theta}{2} &=& \displaystyle \frac{1+\cos \theta}{2}\\\\
\tan^2 \displaystyle \frac{\theta}{2} &=& \displaystyle \frac{1-\cos \theta}{1+\cos \theta}
\end{eqnarray}
倍角の公式とは逆で、\(\displaystyle \frac{\theta}{2}\)が入った式を\(\theta\)だけの式に変形する公式です。
倍角の公式から導けます。使い方としては、
\(\sin^2 \displaystyle \frac{\pi}{12}=\displaystyle \frac{1-\cos \displaystyle \frac{\pi}{6}}{2}=\displaystyle \frac{2-\sqrt{3}}{4}\)
のように使えます。
また、2次の式を1次の式に直せるのも、この式の大きなポイントですね。
↓ 半角の公式の証明と解説はこちら↓

積和の公式
積和の公式とは
三角関数の\(\sin A\), \(\cos B\)の積を和に直す公式
\begin{eqnarray}
\sin A\cos B &=& &\displaystyle \frac{1}{2}&\{\sin(A+B)+\sin(A-B)\}&\cdots(1)& \\
\cos A\sin B &=& &\displaystyle \frac{1}{2}&\{\sin(A+B)-\sin(A-B)\}&\cdots(2)&\\
\cos A\cos B &=& &\displaystyle \frac{1}{2}&\{\cos(A+B)+\cos(A-B)\}&\cdots(3)&\\
\sin A\sin B &=&- &\displaystyle \frac{1}{2}&\{\cos(A+B)-\cos(A-B)\}&\cdots(4)&
\end{eqnarray}
積和の公式は文字通り、三角関数の積を三角関数の和に直す公式です。
積を和に直すとき、\(\sin A\)などと独立していた角度が、\(\sin (A+B)\)のように角度の和(差)になる点には注意が必要です。
この公式は加法定理から導くことができます!
↓ 積和の公式の証明と解説はこちら↓

和積の公式
和積の公式とは
三角関数の\(\sin A\), \(\cos B\)の和を積に直す公式
\begin{eqnarray}
(1)\ \sin x+\sin y &=& 2\sin\displaystyle \frac{x+y}{2}\cos \displaystyle \frac{x-y}{2} \\
(2)\ \sin x-\sin y &=& 2{\cos\displaystyle \frac{x+y}{2}\sin \displaystyle \frac{x-y}{2}} \\
(3)\ \cos x+\cos y &=& 2{\cos\displaystyle \frac{x+y}{2}\cos \displaystyle \frac{x-y}{2}} \\
(4)\ \cos x-\cos y &=& -2{\sin\displaystyle \frac{x+y}{2}\sin \displaystyle \frac{x-y}{2}} \\
\end{eqnarray}
和積の公式は積和の公式の逆で、三角関数の和を積に直すことができる公式です。
この公式は積和の公式から導出ができます。
↓ 和積の公式の証明と解説はこちら↓

+α 3倍角の公式
3倍角の公式
\begin{eqnarray}
\sin 3\theta &=& 3\sin \theta-4\sin^3 \theta \\
\cos 3\theta &=& 4\cos^3 \theta-3\cos \theta \\
\tan 3\theta&=& \displaystyle \frac{3\tan \theta-\tan^3 \theta}{1-3\tan^2 \theta}
\end{eqnarray}
3倍角の公式は、加法定理と倍角の公式から求めることができる公式です。
性質は倍角の公式や半角の公式と似ており、\(3\theta\)を含む三角関数を、\(\theta\)だけの三角関数に直すことができます。
登場する機会は他の4つより少ないですが、余裕があれば覚えておいて損はないでしょう!
↓ 3倍角の公式の証明と解説はこちら↓


これで加法定理を応用した公式の解説は終わりです。
では、三角関数の合成と最大値・最小値の解説をしていきます!
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三角関数の合成
三角関数では、和を1つの三角関数で表すことができます。
$$a\sin x+b\cos y=\sqrt{a^2+b^2}\sin (x+\alpha)$$
と言った感じです。
これを三角関数の合成といいます。
三角関数の合成とは
$$a\sin x+b\cos y=\sqrt{a^2+b^2}\sin (x+\alpha)$$
ただし、
\begin{eqnarray} \cos α &=& \displaystyle \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\\
\sin α &=&\displaystyle \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\end{eqnarray}
↓ 三角関数の合成の証明はこちら ↓

合成すると嬉しいことがいくつかあります。
三角関数の合成ができると嬉しいこと
- グラフを簡単に書くことができる
- グラフが書けるから最大値・最小値を求められる
- 式が簡単になるから方程式が解ける
などです。
具体的にはこんな例題を解くことができるわけです。
例題1
$$y=\sin x-\cos x$$
の最大値・最小値を求め、その時の\(x\)の値を求めよ。
最大値・最小値の例題の詳しい解説は別記事としますが、手順だけ紹介しますね。
三角関数の合成で最大値・最小値を求める手順
- 三角関数の合成で式を\(\sin\)だけにする
- グラフを書く
- グラフから最大値・最小値を求める
例題のように\(y=\sin x-\cos x\)だと計算が煩雑になりますが、合成を使えば\(\sin\)だけになるので、最大値・最小値を簡単に求められるよってイメージです。
加法定理とその応用|まとめ
加法定理とは何か、証明、応用をお話ししてきました。
- 加法定理は6つの式があり、3つの方法で証明できる
- 応用公式は4つ+αあり、様々な場面で活用できる
- 三角関数の合成も加法定理で証明でき、最大値・最小値を求めるなどの嬉しい使い方がある
今回紹介した公式を、1度で全て理解して暗記する必要はありません。
何度も何度も読んで、問題を解いて使って覚えていく公式です!
しかし、加法定理だけは早めに覚えておくといいでしょう。
加法定理から倍角の公式など、他の公式を導くことができるので、テスト中でも解くことができるからです!
(もちろん導く練習は必要ですよ!)
「加法定理 語呂合わせ」と検索すればたくさん出てきますし、トムラボでも紹介しています。

三角関数が苦手、加法定理が苦手という皆さんの力になれていれば幸いです!また、この記事をブックマークして、困った時には何度も使ってもらえると嬉しいです。
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